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Interview「代表が語る」


起業家インタビュー第5回 浜 哲郎氏 [3/3ページ]


鶴見:こうして”いい加減さ”や”他人を受け入れる”ことでやってこられて、これだけ成功しているということは結構頑固なところもあるのでは?

浜:そうですね。でもとりあえずモノを自由に言う、言える土壌があった方が良いですね。

鶴見:人について言えば、そう優秀な方が多くどこにでもいる訳ではないでしょう?

浜:そうですが、与えるというとおこがましいですが、自由にやらせると伸びる人は伸びます。以前ディーラーを英人にやらせていましたが、彼は当然自己主張が強かった。いくら何でも違うと思いぶつかったことは何度もありましたが。

鶴見:日本人とは違いますからね。

浜:でも自分の我が通らず若干面子がつぶれることがあっても結果がよければ良いと、そんな感じでやりました。

鶴見:経営者は結構我が強い人が多いですが?

浜:私は自分で経営者かどうか分かってないんですよ(笑)。

鶴見:このへんで趣味をお聞かせください。

浜:無趣味です(笑)。いえ、趣味というとどれ位知っているのかと言われると・・・

鶴見:では好きなことは?

浜:好きなことは多いです。ゴルフは好きではない。運動です。スキー、ワインは好きです。ここ(So)でもイベントとか楽しんでやっています。

鶴見:お店は損はしないように、そして楽しむこと?

浜:イベントそのものはペイしなくてもお店に一度来ていただくとまた来ていただけるチャンスが生まれますから。ビジネスは楽しまないとダメです。ただ稼ぐだけだは・・・

鶴見:しかし人の軋轢とかありませんか?

浜:そうですね、本来のビジネスでない部分に神経を使っている人は結構多いです。それが無くなったらどんなに効率が上がるかといつも思っています。

鶴見:そうですが、現実は必ず軋轢がありますよ。

浜:そうですね、軋轢は出来るだけ起こさない、喧嘩もしない。良いことはありませんから。昔の人は喧嘩して鉾をどう納めるかを知っていました。私はそこまで熱くはないです。

鶴見:クールなんですね。

浜:私が心掛けていることですが、もっとこうした方が良いと思う場面でも上からドーンと言わないようにしています。これをやると中間管理職の人がプレッシャー受けてそれがまた下に行きます。こうなるとギクシャクして雰囲気も悪くなりますよ。皆が自分で気がついてくれればそれが一番です。

鶴見:雰囲気を大事にするんですね。

浜:うちのスタッフでお休みの日にお店にくることもよくあります。スタッフがお客さんと食事をしたり。

鶴見:普通はスタッフはお休みならお店に来ないのでは?

浜:働いている人同士、仲が良いんですよ。家族つれて仲間同士でダンスに行ったり。これって客商売では重要でしょう?

鶴見:それはそうですね。

浜:あるレストランで見ましたが、板さんとスタッフが喧嘩をしていました。これをお客がみたらそのお店には行かなくなりますね。これをやったらダメです。

鶴見:同感です。お聞きしているとお父様と同じようにはなりませんね。

浜:でも仕事はこの先、どこでどうなるか読めません。そこでさっきの楽観論です。どうにかなるといつも思っています。

鶴見:で読者にはどんどん起業して楽しんでみてはどうか、ということですか?

浜:そうですね、ウチのスタッフでも起業したいなら後押ししたいと思います。

鶴見:それは良いですね。最後に何かメッセージがあれば。

浜:日本人の若い人、特に男性に覇気がないって最近言われていますが、逆に我々世代が経験したことをベースにすると覇気がないように見えるだけで、実は彼等は別の部分で何かを持っているのではないでしょうか。今回東日本大震災があって何かしなくてはという意識を持った若い人が多いです。萎縮して、不景気だし最低限なんとか食べてゆくだけで良いと思わずに、何かをブレークして始めてしまえば意外と展開はあるのではないかと思います。日本人の若者は捨てたものじゃないですよ。海外で活躍する人物がアートだけでなくビジネスの分野でもっと出てきてほしいと思いますね。

鶴見:平和の時より危機の時代がチャンスでしょうか?

浜:そう思います。リーマンショックでも失われた20年でも最後はそこそこで終息するのでは何も起こらない。もう少し落ち込むと何とかしなくては、という人が出てくるのではないでしょうか。

鶴見:浜さんのお話を伺っていると、何かに逆らって遮二無二やるというよりうまく時代の波に乗ってやる。無理がないですね。

浜:時の流れがありますからそれを読むセンスは必要かな?

鶴見:それには人を信じることですか?

浜:そうですね、人を騙すなら騙された方が良い主義で。会社の中でお金に関係する悪いことは何度か起きましたが、それはそれで淘汰されますし、周りもほっておきませんから無理やり何かしなくても完結してゆくケースが多いです。

鶴見:これからビジネスをやる若い人だけでなく我々にもとても参考になるお話でした。普通はビジネスを経験した人の口からは「ビジネスはそんな甘いものではない」という話がよく出ますが、浜さんのお話はそんな力が入っていませんね。

浜:そうですね、よく先輩の技を盗めとか言いますが私はちゃんと教えてあげた方が良いと思います。そういった精神主義とか、下積み何年やらないと、みたいは話がありますがそれでは若者の才能開花が遅れる気がします。

鶴見:これだけの実績のある浜さんだとお話に信憑性があります。

浜:繰り返しますが100人100通りのやり方がありますから、成功の方程式はないと思っています。

鶴見:今日は色々勇気付けられるお話を有難うございました。これからもお元気でご活躍ください。



インタビュアー:鶴見
撮影日・場所:2012年3月 So Restaurant


インタビュー後記

これほどの試練をくぐってきた人の割には呆れるぐらいの大らかさ。ご自分でもいい加減をモットーにしていると言われている位だが、そこは修羅場をくぐり失敗も経験されて出た言葉だと分かる。けっしていい加減ではなく慎重さと大胆さがうまくミックスされ、十人十色のやり方があると、押しつけをせずにやる浜流は大いに参考になりました。人の良さを引き出し、仲間の和を尊ぶ。ビジネスは楽しむもの。こんな人と一緒に働きたいと思わず口にしてしまいました。