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Interview「代表が語る」


起業家インタビュー第5回 浜 哲郎 [2/3ページ]


浜:彼はお店を閉めると言う。後はどうするのか聞いたら何も考えていない、というのでではロンドンでまたやる?ということでまた(レストラン)が始まってしまいました。元に戻りますが、やはり(今やっているやり方では)レストランはビジネスではないです。

鶴見:ホビーですか?

浜:いや、ホビーじゃあないですね。なんだろう?でも大変なんですね。だからもう一度やるのは、とは思ったんですが彼という人間が核になってやってくれるなら安心できるし・・・。

鶴見:やはり人次第なんですね。

浜:それとイギリスでは日本(風)レストランで成功している人はいるが日本人がほとんどいなかった。それは悔しいと、今でも飲食業をやって強く感じています。たとえSoレストランで出来なくても最近の日本食ブームですからお話もくるので。最近はそんなことを感じています。

鶴見:頼もしいですね。でレストランの後は車のビジネスを始められましたね?

浜:それは1979年です。1973年頃レストランを始めた頃から日本で並行輸入が許可になって車好きの人とか、ディーラーさんが(英国に)買付にこられるようになりました。こういう人が通訳より、車好きの人を探していました。

鶴見:なるほど。そこで浜さんのところに来た。

浜:もともと車は嫌いではなかったのでお付き合いをし、買付などをしているうちに車ビジネスが段々見えてきました。そんな中、イギリスで日本人向けに車を販売しているところがなかったのでこれは一つのビジネスになるのではないかと思いました。

鶴見:その内に日本人相手だけでないビジネスに広げましたね。

浜:そうです。当時日本人は2,3万人ではなかったでしょうか。それが20年位経つと5万5千人ぐらいになり、それから6万人ぐらいのところを上下していました。日本人向けだけのビジネスはほぼ頭打ちです。それ以上伸ばすにはローカルに広げるしかありません。

鶴見:では現地人のディーラーさんと比べても成功した理由は何ですか?

浜:フランチャイズ・ビジネスを(考え)始めまして、それが80年代終わりごろです。その中で日本車はまだ伸びるだろうと思いトヨタのディーラーになったのが91年です。

鶴見:その頃にはこうすれば成功するみたいなものが分かった?

浜:いえ、そんなロジカルなものはないです(笑)。勘ですかね?当時日産がシェア―が高かったんですが、それはある有名な人が安売りでシェア―を伸ばしていた。しかしこれではディーラーとしては儲かりません。成長にも限度がある、という印象を持っていました。

鶴見:そこでトヨタがまだ伸びると見た。

浜:そんな感じでした。ロンドン近郊の限られた日本人だけを相手にしても限度がある。となればノン・ジャパニーズを相手にビジネスをするしかありません。

鶴見:お話を伺っていると、あまりあれこれ悩まないでビジネスをされている風に見えますが?

浜:いい加減をモットーにしていますから(笑)。

鶴見:ある程度のいい加減さがビジネスに必要ということですか?

浜:いえ、100人いれば100通りのビジネスのやり方がありますから。

鶴見:というと?

浜:ビジネスで成功した偉人などのことを書いた本を読むと、この人の真似は私にはできないな、というのがほとんどです(笑)。だから自分は自分流のやり方でやるしかありません。

鶴見:割り切っておられるんですね。

浜:まあ結果論ですが、ソフトに構えて流れに乗るしかありませんから。

鶴見:でも世の中にはそうやって失敗する人もいますよ。

浜:ええ、それはそうですね。運もありますが。

鶴見:その運を引き寄せるコツは何ですか?

浜:こんなことを言ったら生意気ですが、運は”引き寄せる”のではなく”見つける”ことかな?

鶴見:と言うと?

浜:目的意識があればチャンスが見えた時につかみます。この意識がないとチャンスがきても通りすぎてしまいます。

鶴見:なるほど、まずはこれをやるぞという目的意識を持つことですね。

浜:でもこう言うと話がややこしくなりますが、私は“これをするぞ”と決めつけている訳ではありません。何もないとは言いませんが、ある流れの中でこれはいける、これはダメと判断します。

鶴見:いままでやってきて、これは失敗したとか?

浜:それはありますよ。日本で出資して支店を出してダメだったとかパリ支店の失敗など、もうダメかなと思ったことも1,2度ありましたよ。でもどうにかなると思っていました。1、2年後に自分はまだ生きているだろうと思えば何とかなるかと。

鶴見:それはかなりの楽観主義者ですね。

浜:それはそうだと思います。昔はともかく今は眠れない夜などありませんね(笑)。

鶴見:それでここまでやってこられた。羨ましい話ですね。そんな中で特に人についてどんなことに気をつけてやってこられましたか?

浜:そうですね、今日本には強力なトップダウンでやっておられる方がいらっしゃいますね。孫さん、柳井さんにしても人を引っ張るタイプ。私はあのタイプではないです。皆が働きやすいようにすることだけを考えています。

鶴見:私、浜さんの下で働きたいです(笑)。

浜:他人の意見を聞いて、ああこんな考え方もあるのだと思う。でもお付き合いしていくうちにやはりこれは違うなというケースもあります。とりあえず他人のやり方を否定しません。この方がお互いにプラスになりますから。