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Interview「代表が語る」


起業家インタビュー第3回 荒 幾則氏 [3/3ページ]


浜:えー、起業のきっかけの質問なんですが・・・

荒:日本でもやっていたし、頭の中にもあって・・・

浜:そういう意味では順当に。

荒:一番起業しやすい業種だと思いますね、設計というは。オーバーヘッドは少なくて。レストランなら場所は必要だし、改装にお金はかかるしシェフも雇わなければならないし。でオープンしたらしたで食材も買って来なければならないし、従業員の給料も払わなければならない。設計というのは頭の中にあるものを紙に移せば良いわけだから。

浜:私も設計やりたかったな(笑)

荒:来てすぐに独立では右も左も分からないと駄目なんで大きな設計事務所に行って。今でもその連中とはコネクションが出来ているから・・・。

浜:仕事を融通しあう?

荒:いや、融通しあうというよりは私が見つけてきた仕事を彼らがサポートする。今は一人でやってますけど、この近くのアクアスキュータムも僕がやったんですけど・・・。

浜:今のアクアスキュータム?

荒:そうです。レナウンが買収後10年以上も店の改装をしてなかったのを僕が言って勧めたんです。その時にも昔の仲間を全部集めてこういうプロジェクトがあるとみんなでやろうと。構造計算は誰、コストマネージメントは誰という風に

浜:独立されたというのは当然の流れで、機が熟したということだったんですね。

荒:日本からこっちに来たというのは女房の一言で、イギリスに来たこともないのに永住することを決めていて・・・最初の設計事務所に入ったのも運が良かったのと女房のお陰ですね。皆さん起業される時は経理とか色々問題があると思いますけどウチの場合は女房が全部やっているんです。だから起業の際に弁護士に払った費用も10ポンド程度だけです。全部自分で作って・・・。

浜:本当に登録費用だけなんですね。今でも100ポンド程度なら出来ますけど。

荒:弁護士も友人だったので。最後のところだけ彼がちょこっとチェックして、だから起業って難しい事じゃないんですね。

浜:これから起業する方には起業は実は簡単なんですよと・・・。

荒:ただ英語がしっかり分からない人がやると間違ってしまう。あと税金の問題もそうですがいかに安くできるか考えなければならない、アカウンタントを選ぶのも大事だし。だから日本で高校、大学時代に考えていたことだけども、こんなこと言っちゃまずいかな(笑)自分で英語を勉強してやるより英語をしゃべれる人と結婚した方が近道で、ヴィザの問題もないし。自分ですべきは専門知識、技術、もしくはタレントというのかな、これを磨いておけば外国に行ってもどうにかなるかなと。

浜:ビジネスの上でも、もちろんプライベートでもそうでしょうが良きパートナーですね。奥さんは。

荒:実はオーストラリアに行きたかったんです私は。波乗りが好きだったから。暖かくて、波があって・・・。

浜:全然違うじゃないですか(ここは)。暖かくないし、波もないし。

荒:だから最初に女房にプロポーズしたのはオーストラリアからなんです。一旦事務所を辞めて、85年の秋にオーストラリアに語学研修に行ったんです、30過ぎてからですよ。で女房は日本に居ましたからemailじゃない、手紙ですよね、書いて。

浜:あの頃は手紙ですよね。

荒:手紙書くと私の英語力では女房には意味が分かんないんです(笑)で、女房は他の英語の先生達と一緒にバリ島に行くからとにかくバリ島で会おうということになって、バリ島でプロポースしたんです。女房はイギリス人だけどそれでもいいかと。

浜:暑くないし、波は無いし・・・で?

荒:来て正解でした。実は波はあるんですよ。ランズエンドとかニューキーは有名ですよ。サーフィンは、こんな話まで入れちゃうの(笑)1970年に始めたんです。日本ではまだ波乗りがそれほどでもない時から。佐賀さんという人が日本で一番最初です。

浜:あの頃のサーファーってかなり先端で結構不良だったり・・・もてたでしょう?

荒:そんなことないですよ。でもサーフィンやってて、六本木で自分のデザイン事務所やって仕事はディスコとかブティックの設計ですから、チャンスはありましたよね。

浜:さて、長くなってしまうので、成功、失敗、自慢、反省何かありますか?

荒:割合予定をしっかり立ててやってきているから取り立てて成功失敗というのは・・・自慢ではないけどいろんな人に言いたいのは、日本で経験が無くて勉強もしてなくて、イギリスへ突然来てなんかやろうっというのはやはり無理ですよ。日本で何か実績を作ってそれから来ればいい、プラス英語力。本人に無かったら良きパートナーを見つけて・・・。

浜:良きパートナー、それ結構ハードルが高いかもしれないですよ。荒さんは良い方を見つけられたけれど、上手くそういう方を見つけられるかどうか。

荒:それがベストですよね。それとネットワークを広げるためには最初から日本人の世界の中に入らないで、来た時はイギリス人の世界に入ったらいい。私は事務所を出してからですよ、こうしてロンドンに来るようになったのは。それまでは年に一度か二度程度しか来ていなかった。

浜:本当にイギリス人の中にどんと入ったわけすね。

荒:今でも家に帰ると周りには日本人は誰もいないですから。あの辺り(注:ノッティンガム)は本当のイギリス人がいますよ。ロンドンは外人ばかりですよね。そういう意味では私は良い環境に居たと思います。

浜:では最後にご質問ですが、もし別の人生かあるとしたら同じことをやられますか?

荒:そう、私は同じことをやると思います。ただイギリスではなく温かいとこで。(笑)

浜:今日は有難うございました。だいぶ長くなってしまいましたのでこの辺で。



インタビュアー:浜哲郎 JCCI起業部会長(2010-2011) JEM Group会長
撮影日・場所:2011年5月 So Restaurant


インタビュー後記

さすが江戸っ子です。まっつぐに建築の道を歩んで来ておられます。「日本で経験もなく勉強もせずにイギリスに突然来て何かやろうってのは無理です」と言われるのも曲がった道ではなく一筋に生きてきた証と自信の言わしめる言葉でしょう。奥様との仲の良さは話の端端に感じられます。プライベートは勿論、仕事の上でも良きパートナーとしてお二人で人生を歩んできたことが分かります。サーフィンは今でもやられるそうでそのお話では少年のように目がひときわ輝いてきました。その辺のお話は紙面の都合と、ひょっとしたらプレイボーイっだかも知れない過去を暴くことによって夫婦仲に影響が及ぶことを考え割愛しました。